「うるさいな。猫なんかいないよ。ほかを探してこい」
二人は、ほかの部屋に行きました。
「もしもし、金目銀目《きんめぎんめ》のネコが来ませんでしたか」
「チロ、チロ、チロや……」
寝ていた匪賊《ひぞく》達は目をさましました。
「うるさいな。ネコなんかいないよ」
そして二人は、あちらこちら探しまわりました。
奇術師《きじゅつし》の子供達が猫を探しているので、誰も怪《あや》しむものはありませんでした。
けれどじつは、玄王《げんおう》のことを探偵《たんてい》しているのでした。
あちらこちらはいりこんで、それから、金銀廟《きんぎんびょう》の方へ行ってみました。
「もしもし、金目銀目の猫が来ませんでしたか」
小さなランプのついてるきりの、うす暗い中から、二―三人の男が[#「二―三人の男が」は底本では「二|三人の男が」]起きあがりました。
「うるさいな。猫なんかいないよ。病人がいるきりだ」
「いいえ、確かにチロが、こっちへ逃げて来たんです」
ふたりはどしどし、中にはいっていきました。
奥の方に祭壇があって、金銀の厨子《ずし》の中に、猫の像が金目銀目を光らしており、いろんな不思議な
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