、変な人が三人乗っていました。白と黒との市松《いちまつ》の服をつけ、尖《とが》った三角の帽子をかぶっている大男、それはキシさんです。五色の縞《しま》の服をつけ、ふさのついた大きな帽子をかぶってる少年、それは太郎です。紫の服に白い羽の帽子をかぶっている少女、それはチヨ子です。チヨ子のひざには、まっ白な金の目銀の目の猫が抱かれています。そして三人は、パンや、焼肉や、果物などをまん中にならべて、食事をしているのです。
 そればかりではありません。馬車《ばしゃ》のかたすみには、かばんや毛布、大きな毬《まり》や金輪《かなわ》や、ナイフや棒など、いろんなものが積み重なっています。それに、馬車には馬も二頭ついていて、いつ駆けだすかわからないありさまです。
 メーソフはあきれかえって、目をみはりました。
 メーソフの姿を見て、太郎は笑いながら飛び出してきました。それから、両腕を組み、首をかしげて、いばりくさったようすで言いました。
「メーソフさん、この馬車はなかなかいいですね。すっかり気に入りました。どうか売ってください。ぼくたちは、このとおり、じつは奇術師《きじゅつし》なんです。これから、満州《まん
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