松本さんのところに、知らせることに約束しました。
奇術師になった三人は、多くの荷物を持って、大連《だいれん》から船で、山海関《さんかいかん》に渡りました。山海関から先は、奇術をやりながら行くのです。
鉄の馬車《ばしゃ》
山海関で、大事な用がありました。奇術をやりながら、興安嶺《こうあんれい》の山奥まで行くのですから、とちゅうでどんなことが起こるかわかりませんし、道に迷うことがあるかもしれませんので、まず第一に、じょうぶな馬車《ばしゃ》と馬とがいるのです。
馬は、すぐに見つかりました。たくましい、栗毛の馬を二頭買いました。ところが、じょうぶな馬車《ばしゃ》が、なかなかありませんでした。馬車屋に行ってききましたが、ふつうの馬車きりありませんし、新しくこしらえさせるには、大変手間どります。自動車ではだめなんです。それには、キシさんも太郎も困りました。
そしてある晩、むだにあちらこちらたずね歩いたのち、宿屋に帰りますと、並木の下のうす暗いところに、ひとりの少年が、しくしく泣きながら、立っていました。
「どうしたんだい」と、キシさんは親切にたずねました。
少年はなおしゃ
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