とも、うち勝《か》つかだ」
王子は石を一つ拾《ひろ》って、それを力まかせに投《な》げてみました。石は遙《はる》か下の方の雲《くも》に巻《ま》きこまれたまま、なんの響《ひび》きも返《かえ》しませんでした。
「よしッ!」
と王子はいいました。
そして、岩《いわ》の上から真逆《まっさか》さまに、むくむくとしてる雲《くも》のなかをめがけて、力一ぱいに飛《と》びおりました。
……………………………………………………
王子は、はっとして我《われ》に返《かえ》りました。
見ると、自分は城《しろ》の庭《にわ》の芝生《しばふ》の上に寝《ね》ころんでるのでした。からだ中|汗《あせ》ぐっしょりになって胸《むね》が高く動悸《どうき》していました。
しかし、いくら考えてみても、さっきまでのことが夢《ゆめ》であるかまたは本当《ほんとう》であるか、どうもはっきりしませんでした。本当《ほんとう》だとするには、あまり不思議《ふしぎ》きわまることでしたし、夢《ゆめ》だとするには、あまりはっきりしすぎていました。
「どちらでも構《かま》うものか」と王子は考えました。そしてまたこう考えました。「高いところへあが
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