》がもれたり、勇気がくじけたりするからだ。そんなわけで、マリイの姿を見かけても、声もかけなかった。許してくれ、おれが悪いんだ。おれの胸は煮えくり返るようだった。せめての思いに、金の包みを届けておいたが、受取ったろうね。それより外に、どうにもしようがなかった。一度|海賊《かいぞく》の仲間にはいると、それからぬけ出すことは、一同を裏切ることになるもんだから……。ああ、おれはどうしたらいいか。どうしたらいいか……」
 彼はむせび泣いていました。母親も泣いていました。マリイも泣いていました。
 トニイは顔をそむけて、窓から外をながめていましたが、その時、わざと笑いながら朗らかにいいました。
「とうとう僕の計略にかかりましたね。化《ば》け者《もの》のことなんか、みんなうそですよ。泣いたりなんかしないで、しっかりするんですよ。どうせもう、家族の者にあって、海賊の約束をやぶったんだから、思いきって、ぬけ出したらいいじゃありませんか。汽車にでものって、遠くに逃げちゃうんですね。あとは僕が引き受けます。絵はがき屋のトニイだ。街のトニイだ、海賊なんかごまかすのはわけはありません」
 マリイの父親は、涙をふ
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