ころで、こうした乱れた宴席では、言葉があちこちへ飛び、話題も飛躍するものでありまして、中心を捉えるのに困難でありますが、ただ、金田の酔った頭には、景雲のことがなにかひっかかってるようでありました。彼は景雲を一同に紹介するのに、これが例の画舫の哲学者だといいました。また或る所で景雲が述べたという説を披露しまして、その有名な言葉として、西湖を銭塘江岸へと展開させないところに杭州の頽廃がある、というのを伝えました。そこで、西湖の風光と銭塘江の風光との比較論がちょっと出ましたが、金田はもうけろりとして、景雲へ他のことを囁きました。陳家の信頼をあまり得すぎて、瑞華との結婚の話でも持出されたら、承諾する気があるかというのでした。
景雲はすすめられるままに杯をあけながら、答えました。
「あのひとと結婚なさるのは、あなたではありませんか。」
そしてすぐ彼は、ばかなことをいったと思って、自分の腿を強くつねって、その痛みに顔をしかめました。
金田は声高く笑い出しました。
「君は可愛いことを考えるね。鶯妹に好かれるだけあるぞ。……おい鶯妹、この人は君と結婚したいんだそうだ。もう今夜は帰すなよ。」
鶯
前へ
次へ
全24ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング