で、午後の三時頃から夜まで引続きました。初めは経済や政治の話題も出ましたが、夜になるにつれて人数も減り、三十年配から四十年配の者四五人となり、それがみな張金田の親しい飲み仲間ばかりでしたから、酒の酔につれて話も猥雑になり、やがて芸妓が呼ばれるようになりますと、一座はすっかり乱れてきました。宴席のそうした調子は、それがただ偶然の集りであることを示すものでありました。実際、その日の午過ぎ、この料亭で結婚式が行われまして、それに列した張金田は、式後、奥の室に陣取りまして、知人をやたらにそこへ引張り込んだのでした。彼はなにかしら、心が苛立ってるとも浮立ってるとも見えるのでありました。
 室の床には、水瓜の種の皮や、向日葵の種の皮や、落花生の皮や、梅の実の種や、鶏の骨などが、あたりに散らばり、また誰かが結婚式の残りのものを持って来たと見えまして、五色の切紙やテープが散乱していました。夜の時間がたつにつれて、料理の皿は冷えてきましたが、老酒の銚子は熱くなりました。拳《けん》の勝負を争う者もあり、カルタを取寄せる者もあり、女に戯れる者もあり、口をあけてうっとりしてる者もありました。
 そういうところ
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