のようにして下さい。」
そして暫く、美津子さんは燃え上る火を見ていましたが、ふいにがくりとなって、地面に突っ伏してしまいました。わたくしが驚いて援け起しますと、大声で叫びました。
「燃やすんですよ。庭中を火事のようにするんです。」
わたくしは急に腹が立ってきました。火事と病気を用心しましょうという、平素のことも根にありました。この気狂女の言うままになったことが癪に障りました。逆に出てやれという気になりまして、有り合せの棒切れを取って、燃えさしの紙片をめちゃくちゃに掻き廻し、やたらに撥ね散らしました。その時のわたくしの気持ちこそ、全く狂気の沙汰でした。
その紙屑の火から、そばにあった物置が一つ焼けてしまうことになりました。物置の前に、まだ片付けてない炭の空俵や藁束などがありまして、それに火が燃え移りましたのを、わたくしはただぼんやり眺めていたのでございます。美津子さんは自分が物置に火をつけたと仰言ってるそうですが、それは嘘か錯覚に違いありません。たとえ粗相からにせよ、物置が燃え上るようなことを致したのは、この花子でございます。
底本:「豊島与志雄著作集 第五巻(小説5[#「5
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