ま。存じておりますわ。」
「それなら、わたしに電話ぐらいして下すってもよろしいでしょう。」
「だって、つまらないことですもの。」
「いえ、わたしが言うのは、星山さんのことではありません。どういう人が、どういうわけで襲ったか、それがすこし気になって、わざわざ、こうして出て来たんですよ。わたしたち、星山さんとはああした係り合いがあるでしょう。だから、もしも、その襲った人にも係り合いがあったら、どうしますか。こんどは、噂だけでは済みませんからね。警察の方からも人が来たそうですよ。」
「そのようなこと、御心配なすっていらしゃいますの[#「いらしゃいますの」はママ]。それでは、おばさまにお目にかけるものがございます。」
美枝子は立ってゆき、間もなく、一つの封筒を持って来た。
封筒にはただ、「小泉美枝子様、必親展」とだけしてあった。
「今日の午後、宅の郵便箱にはいっておりましたの。御本人が自分で投げ込んでいったものと思われます。」
恒子は封筒を開いた。粗末な紙に几帳面な[#「几帳面な」は底本では「凡帳面な」]細字が竝んでいた。
御別れしなければならなくなりました。私は田舎へ引込みます。愛
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