板倉の家人たちにはすぐに知れ渡った。格闘を目撃した者もいたのである。然し、様子を見に来た警官に向って、星山は、下らないことだと言い、襲われたのは事実だが、顔見知りの男だし、物取りでもないことだし、内分に願うと言った。
 事件は一応落着した。
 その話が、翌日の夕方、立花恒子の耳にはいった。彼女はティー・パーティーを早めに辞去したため、その時は知らなかったのである。なにか胸に思い当ることがあって、彼女は板倉邸へ電話し、なお事情を確かめた。考えこみながら夕食をすましたが、どうにも落着かず、自動車を駆って小泉美枝子を訪れた。
 美枝子が出て来るまで、恒子は応接室の中をぐるぐる歩いていた。
 彼女は立ったまま、美枝子の腕を掴んだ。
「まあ、あんた、知ってるの。」
「どうなさいましたの、おばさま。」
 美枝子はにこやかに彼女を迎え、隅の方のソファーに招じた。
 恒子は急に気落ちした思いで、美枝子の顔をしげしげと眺めた。思い惑った末、漸く言い出した。
「昨日、あの板倉さんのティー・パーティーの日にね、星山さんが、途中で誰かに襲われなすったこと、知ってますか。」
「あ、あのことでございますか、おばさ
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