ピンカンウーリの阿媽
豊島与志雄

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)※[#「山+労」、413−下−23]山の
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 忙中の小閑、うっとりと物思いに沈む気分になった時、いたずらにペンを執って、手紙でも書いてみようという、そんな相手はないものだろうか。もとより、用事の手紙ではなく、眼にふれ耳にはいる事柄の、埒もない独白だ。
 窓前の木の枝に小鳥が鳴いてるとか、薄霧がはれて日の光りがさしてきたとか、象牙のパイプに脂の色がほんのりしみてきたとか、銭湯に行こうかそれともちょっと酒でも飲もうか……などなど、意味もないつまらないことばかりを並べ立てて、さて、そんな手紙を誰に宛てて出したらよかろうか。
 手紙を書くということは、元来、ひどく億劫なことである。埒もない手紙にしても、戯画戯文ではない。それを書くのだから、なにかそこにはおのずから心情の温かみがあろう。愛情というほど強いものではない。ただ、頬杖をつくぐらいな気持ちで頭をもたせかける胸、何も求
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