たがフランス人についておっしゃったことに、私は興味を覚えます、そして別に意外とは存じません。フランス人にたいするあなたの不当な御意見を私がたびたびとがめましたことは、覚えていらっしゃいましょうね。フランス人を愛さないということはできます。けれども彼らはなんという怜悧《れいり》な民衆でしょう! 善良な心と強健な肉体とに救われている凡庸な民衆はいくらもあります。ところがフランス人は知力で救われております。知力は彼らのあらゆる弱点を洗い清めます、知力は彼らを生き返らせます。彼らは没落し倒壊し腐敗しているように見えるときにでも、自分の精神から不断に湧《わ》き出している泉の中に、新しい若さをふたたび見出すのです。
 私はあなたに小言《こごと》を申さなければなりません。あなたは自分のことばかり語るのを許してくれとおっしゃいました。あなたはほんとに瞞着家[#「瞞着家」に傍点]です。少しも御自分のことを私に聞かしてはくださいません。あなたのなすったことは何にも、あなたの御覧なすったことは何にも、私に聞かしてはくださいません。従姉《いとこ》のコレットが――(なぜあなたは彼女を訪《たず》ねてはくださらない
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