ても、または、ある者は特権者のために貴族的な旧館を建て直そうとし、ある者は民衆に開かれて集団的魂が歌うべき大広間を作ろうとして、過去の改造者と未来の建設者とが共に働いてる、芸術界においても、みなそうです。それにまたこの巧妙な動物らは、何をなそうと常に同じ巣ばかりを作るのです。海狸や蜜蜂《みつばち》のような彼らの本能は、いかなる時代にあっても、彼らに同じ動作をさせ、同じ形を見出させるのです。もっとも革命的な者もおそらく、みずから知らず知らずに、もっとも古い伝統に執着してる者かもしれません。産業革命主義者やもっとも特異な新進著作家などのうちに、私は中世紀の魂を見出したことがあります。
今や私は彼らの騒々しいやり方にふたたび馴《な》れましたので、彼らが働くのを愉快にながめています。けれどうち明けて言いますと、私はあまりに年老いてる厭世《えんせい》家ですから、彼らのどの家にはいっても安楽な心地はしません。私には自由な空気が必要です。とは言え、彼らはなんというりっぱな労働者であることでしょう! それが彼らのもっともすぐれた美点です。その美点のために、もっとも凡庸な者や腐敗した者までが奮起させら
前へ
次へ
全340ページ中83ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング