そのやつれた顔をみると、辛抱ができなかった。まっすぐに進み寄っていって、両手を差し出した。レヴィー・クールのほうでも、なんら理屈なしにその手を握った。クリストフは言った。
「不幸だったそうですね!……」
 その感動の様子はレヴィー・クールの心に沁《し》み通った。そして言い知れぬ感謝の念を覚えた……。二人は悲しい取り留めのない言葉をかわした。そのあとで別れたときには、二人を隔てていたものはもう何も残っていなかった。二人はたがいに戦ってはきた。それはもとより致し方ないことだった。人はそれぞれ自分の天性の掟《おきて》を果たすべきである。しかし悲喜劇の終わりが来るのを見るときには、仮面としていた熱情を脱ぎ去って、たがいに顔と顔とを見合わす――そしてたがいに大して優劣のない二人の者は、自分の役目をできるかぎりよく演じてきたあとに、握手をし合う権利をまさしくもっている。

 ジョルジュとオーロラとの結婚は、春の初めに決定していた。クリストフの健康はずんずん衰えていった。彼は子供たちから不安な眼でながめられてることに気づいた。あるとき彼は二人が小声で話してるのを聞きとった。ジョルジュは言っていた。

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