ら言った。「あなたはいちばんりっぱな人よ。でもあなたが知らないことだってあるわ。」
「そしてお前は何を知ってるんだい? お前の豪《えら》い知識を見ようじゃないか。」
「私をからかっちゃいや。私は大して知ってやしないわ。でもあの人は、ジョルジュは、知っててよ。」
クリストフは微笑《ほほえ》んだ。
「なるほど、そのとおりだ。愛する相手の者は、いつでも物を知ってるよ。」
彼にとっては、彼らの知的優越に承服することよりも、彼らの音楽を辛抱することのほうがいっそう難事だった。彼らは彼の忍耐力をひどく悩ました。彼らがやって来るとピアノの音が絶えなかった。ちょうど小鳥にたいするように、恋愛は彼らの囀《さえず》りを眼覚《めざ》めさしたらしかった。しかし彼らは小鳥ほど巧みにはなかなか歌えなかった。オーロラは自分の才能を買いかぶってはいなかった。しかし許婚《いいなずけ》の男の才能にたいしてはそうではなかった。ジョルジュの演奏とクリストフの演奏との間になんらの差も認めなかった。おそらくジョルジュのひき方のほうを好んでたかもしれない。そしてジョルジュは、その皮肉な機敏さにもかかわらず、恋人の信念にかぶれが
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