では、こんどは重大なことだと薄々気づいていたが、それを信じたくなかった。嘘《うそ》をついてるときには嘘にたいする叱責《しっせき》をひどく怒ったくせに、今はその叱責の色を母の眼の中に見つけようとした。そのうちにもはや疑えない時が来た。それは彼にとっても家じゅうの者にとっても恐ろしいものだった。彼は死にたがらなかった……。
子供がついに永眠したのを見たとき、グラチアは泣き声もたてなければ悲しみを訴えもしなかった。家の人たちは彼女の沈黙に驚かされた。彼女にはもう苦しむだけの力もあまり残っていなかった。彼女はただ一つの願いしかもたなかった。こんどは自分が永眠すること! それでも彼女は外見上同じ落ち着きで日々の務めを果たしていった。数週間後には、以前よりも言葉少なになったその口にふたたび微笑まで現われた。だれも彼女の寂寞《せきばく》たる心に気づく者はなかった。クリストフはなおさら気づかなかった。彼女は彼に子供の死を知らしただけで、自分のことは何にも述べなかった。不安な情愛にあふれてるクリストフの幾度もの手紙に、彼女は返事も出さなかった。彼はやって来たがったが、そんなことをしてくれるなと彼女は頼
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