はなかった。彼女は二年来たえず危惧《きぐ》のうちに暮らしてきた。そしてその危惧は、リオネロから残忍な才能で弄《もてあそ》ばれるだけにいっそう募っていった。リオネロは自分を愛してくれる人々をいつも不安がらせる術においては、みごとな腕前を習得していた。同情を起こさせたりするために、彼の隙《ひま》な頭脳はいろんな手段を考え出した。それが一種の病癖となってしまった。そして悲しむべきことには、彼が病気を装ってるうちに、病気は実際に進んでいた。そして死が門口に姿を現わした。なんたる劇的皮肉ぞ! グラチアは幾年となく息子の仮病に悩まされてきたので、実際彼が病気になってももうそれを信じなかった……。人の心には限度がある。彼女は嘘《うそ》にたいして自分の同情の力を使い果たしていた。リオネロがほんとうのことを言っても彼女はそれを芝居だと見なした。そしてほんとうのことが明らかになったあとでは、彼女の残りの生涯は悔恨の念に毒されてしまった。
 リオネロの意地悪はいつまでも和らがなかった。彼はだれにたいしても愛の心をもっていないくせに、周囲の人々のだれかが自分以外の者を愛するのを許し得なかった。嫉妬《しっと》が
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