て、それをいかにも自然らしく働かしていた。ジャックリーヌはすぐに心服してしまった。彼女はその慈善事業に熱中した。少なくとも熱中してるつもりだった。アンジェール尼は熱中さすべき相手を見分けることができた。同じような熱中を起こさせることに慣れていた。そしてその熱中には気づかないようなふうをしながら事業のためと神の光栄のためにそれを冷やかに利用することを知っていた。ジャックリーヌは自分の金と意志と心とをささげた。彼女は慈悲深かった。彼女は愛によって信仰した。
人々はやがて彼女が惑わされてることに気づいた。気がつかないのは彼女一人だった。ジョルジュの後見人は気をもんだ。あまりに鷹揚《おうよう》で軽率で金銭のことなんか気にかけないジョルジュでさえ、母親が利用されてることに気づいた。そして不快を感じた。彼は彼女との過去の親密を回復しようとしたが、もう時期おくれだった。二人の間には幕が張られてることを見てとった。彼はそれをこの惑わしの影響の罪だとして、ジャックリーヌにたいしてよりもむしろ、彼が陰謀家と呼んでる尼僧にたいして、一種の憤激を感じ、それを少しも隠さなかった。当然自分のものだと信じている母
前へ
次へ
全340ページ中215ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング