―また結婚以外において――費消しきれなかったひそかな情熱を、息子の上に投げかくるものである。そしてあとになって、息子が母親なしにいかにやすやすと済ましてゆけるかを見るとき、息子が母親を必要としていないことを突然了解するとき、彼女らは恋人の裏切りや愛の幻滅に会ったときと同種類の危機にさしかかるのである。――それはジャックリーヌにとっては新たな破滅だった。ジョルジュはそのことを少しも気づかなかった。若い者たちは周囲に展開されてる心の悲劇を夢にも知らない。彼らには立ち止まって見るだけの隙《ひま》がない。彼らは利己的な本能に駆られて、傍目《わきめ》も振らずに直進したがる。
ジャックリーヌはその新たな苦悶《くもん》を一人で嘗《な》めた。それから脱したのは苦悶が鈍ってきたときにであった。しかも苦悶は愛とともに鈍ってきた。彼女はやはり息子を愛していたが、自分を無益なものだと知って自分自身にも息子にも無関心になってる、悟りすました遠い情愛をもって愛してるのだった。ジョルジュのほうでは気にも止めなかったが、彼女はかくて沈鬱《ちんうつ》な惨めな年を送った。それから、彼女の不運な心は愛なしでは死にも生きも
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