、長い間の不安定な心、少しも外に現わさないでいる内心の戦い、友の心を悲しませてるという悲しみなど。クリストフは彼女が苦しんでるのを察して、その苦しみをさらに募らせないようにと、別離の日が近づくのを見て自分が感じてる苦しみを、彼女には隠しておいた。彼はその日を遅らせようとは少しもしなかった。そして二人はどちらも平静を装った。二人とも平静さをもってはいなかったが、それをたがいに伝えることはできた。
 ついにその日が来た。九月のある朝だった。二人は七月の半ばにパリーを発《た》って、残ってる最後の数週間を、アンガディーヌでいっしょに過ごした。それは二人がめぐり会った場所の近くで、もうあれから六年になるのだった。
 五日前から二人は外に出られなかった。雨がしきりなしに降りつづいた。旅館に残ってるのはほとんど彼らきりだった。旅客はたいてい逃げ出してしまっていた。その最後の日の朝になって、雨はようやく降りやんだ。しかし山はまだ雲に包まれていた。子供たちは召使たちといっしょに第一の馬車で先に出かけた。つぎに彼女も出発した。イタリー平野のほうへ羊腸たる急な下り道となってる所まで、彼は見送っていった。馬車
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