でも馴《な》れ馴れしく彼へ話しかけた。それで彼ら二人が情人同志であることを疑う者はなかった。コレットでさえも彼らをあまり見せつけがましいと思った。グラチアはあらゆる揶揄《やゆ》を微笑で押し止めて、平然と超越していた。
それでも彼女は、自分にたいするなんらの新たな権利をもクリストフに与えていなかった。二人はただ友だちにすぎなかった。彼はやはり同じやさしい尊敬の調子で彼女に口をきいた。しかし二人の間には何も隠し隔てがなかった。何事についても相談し合った。そして知らず知らずのうちに、クリストフは家の中で一種の家庭的主権を振るうようになった。グラチアは彼の言うことを聴《き》き彼の意見に従った。療養院で冬を過ごしてからは、彼女はもう別人のようになっていた。不安と疲労とが、それまで堅固だった彼女の健康をひどく害していた。魂もその影響を受けていた。昔の気紛れがときどき出て来ることもあったが、何かしらずっと真面目《まじめ》になり、ずっと専心的になっていて、善良になり修養をし人を苦しめまいという願望が、ずっと確かになってきた。彼女はクリストフの愛情や無私や純潔な心などに、しみじみと感動させられていた。
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