は、芸術が価値をもってるのは、ただそれが生活に帰着するかぎりにおいてであり、そして生活が愛に帰着するかぎりにおいてである……愛に、うっとりとした逸楽的な肉体の底に醸《かも》さるる愛に……。北方人が事とする、荒くれた交響曲や、悲壮な瞑想《めいそう》や、知的な愛情などは、彼女にとってなんの役にたとう? 自分の隠れた欲望がもっともわずかな努力で花を咲かせるような音楽、情熱を疲らせることのない熱烈な生とも言うべき歌劇、感傷的な肉感的なしかも怠惰な芸術、それこそ彼女に必要なものである。
 グラチアは意志が弱くて気が変わりやすかった。ときどきしか真面目《まじめ》な勉強にかかり得なかった。気晴らしをせずにはいられなかった。前日言ったことを翌日実行することもめったになかった。児戯に類する仕業《しわざ》や張り合いのない気紛れがあまり多すぎた。女特有の曖昧《あいまい》な性質が、病的な無分別な性格が、ときおり現われてきた……。彼女はそれを自分でもよく知っていて、そんなときには人から遠ざかろうとした。彼女は自分の弱点をよく知っていた。その弱点のために友の心を苦しめるようになるのに、なぜ自分はもっとよくそれに抵
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