らなければ隙《ひま》がなかった。そして二人は日と時間とをきめた。
しかしその日になりその時間になると、クリストフは待ち呆《ぼう》けをくわされた。当てがはずれた。彼はジョルジュと再会することに子供らしい喜びを覚えていた。ジョルジュの不意の訪問は彼の生活を明るくしたのだった。彼は非常にうれしくなり感動して、その晩は眠れないほどだった。オリヴィエのことで自分に会いに来てくれたその若い友を、しみじみと感謝の念で思いやった。そのかわいい顔を思い浮かべては微笑《ほほえ》んだ。その自然な性情、その愛嬌《あいきょう》、その意地悪げな生一本な率直さは、彼の心を喜ばせた。オリヴィエと友情を結んだ初めのころ彼の耳や心を満たした、あの幸福の羽音に、あの無音の陶酔に、彼はまた身を任した。そのうえさらに、生者の彼方《かなた》に過去の微笑を見てとるという、いっそう真摯《しんし》なほとんど宗教的な感情までが加わっていた。――彼はジョルジュを待った、その翌日も、また翌日も。しかしだれも来なかった。詫《わ》びの手紙さえ来なかった。クリストフは寂しくなって、少年を許してやるべき理由をみずから考えめぐらした。彼はどこにあて
前へ
次へ
全340ページ中148ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング