ら少ししか離れてないところに、お母さんといっしょにいました。そして私はあなたに挨拶《あいさつ》をしましたが、あなたは眉《まゆ》をしかめて横目で見られたきりで、答えてくださいませんでした。」
「私が君を見たって?……まあ、君にはそう思えたの?……私は君を認めはしなかったよ。眼が弱っているからね。眉をしかめるのはそのせいだよ。……いったい君は私を意地悪な男だと思ってるの?」
「あなたもやはり[#「やはり」に傍点]意地悪になろうと思えばなれる方だと、私は思います。」
「ほんとに?」とクリストフは言った。「それじゃあ、私が会ってはくれまいと君は考えてるのに、どうして思いきって来たんだい。」
「私のほうで、あなたに会いたかったからです。」
「そしてもし私が君を追い出してたら?」
「私はそんなことをさせはしなかったでしょう。」
彼は決意と当惑と喧嘩《けんか》腰との入り交じった様子でそう言った。
クリストフは放笑《ふきだ》した。ジョルジュも笑った。
「君のほうで私を追い出したろうというのかい……。そうだろう。元気者だね!……いや確かに君はお父さんに似てやしない。」
少年の変わりやすい顔は曇った
前へ
次へ
全340ページ中142ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング