のきらめく空間に満ちていて、諸天体の音楽がその揺るがない深い大きな波をそこに広げていた……。
彼が眼を覚ましたときにも(夜が明けていたが)、その異様な幸福は、聞こえた言葉の深い輝きとともになお残っていた。彼は寝床から出た。黙然たる神聖なる感激が彼を支持してくれた。
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…………………汝よく考えみよ、
ベアトリーチェと汝との間にはこの炎の壁あるを[#「ベアトリーチェと汝との間にはこの炎の壁あるを」に傍点]。
[#ここで字下げ終わり]
しかるに今やベアトリーチェと彼との間の障壁は越えられた。
すでに長い以前から、彼の魂の大半は壁の彼方《かなた》に行っていた。人は生きるに従って、創造するに従って、愛しそして愛する人々を失うに従って、ますます死から脱するものである。落ちかかってくる新たな打撃ごとに、鍛え出す新たな作品ごとに、自己から脱出して、自分の創《つく》った作品の中に、今は世に亡い愛する魂の中に、逃げ込んでゆくものである。ついには、ローマはもはやローマの中にはないようになる。自己のよき部分は自己以外のところにあるようになる。クリストフはただ一人のグラチアによって、まだ壁の此方《こちら》に引き止められていた。そしてこんどはグラチアも……。今や扉は苦悩の世界にたいして閉ざされてしまった。
彼は内的|昂揚《こうよう》の時期を過ごした。彼はもうなんらの鎖の重荷をも感じなかった。もう何事をも期待しなかった。もう何物にも従属しなかった。自由の身であった。戦いは終わってしまった。勇壮なる争闘の神――万軍の主たる神[#「万軍の主たる神」に傍点]――が君臨している圏内から外に出で、戦争地域から外に出でて、彼は自分の足下に、燃ゆる荊[#「燃ゆる荊」に傍点]の炬火《きょか》が暗夜のうちに消えてゆくのをながめた。ああすでにその炬火もいかに遠くなってることぞ! 彼はその光に道を輝《て》らされてたときには、もうほとんど絶頂に達したものだと思っていた。それから後いかほど歩いてきたことだろう! それでも頂は少しも近くなったようには見えなかった。永久に歩きつづけても頂には達せられないかもしれない(彼は今やそのことを知っていた。)けれども、光明の圏内にはいり込むときには、愛する人々をあとに残してゆかないときには、その人々といっしょに道を進む以上は永久もさほど長いものではな
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