党員らと労働総組合[#「労働総組合」に傍点]の産業革命主義者らとの間になされていた。バルザックはどこかで、彼の時代のそういう人々のことをこう言っている。「性癖から言えば貴族であって[#「性癖から言えば貴族であって」に傍点]、ただ自分の同類中に多くの劣等者を見出さんがためにのみ[#「ただ自分の同類中に多くの劣等者を見出さんがためにのみ」に傍点]、心ならずも共和主義者となっている人々[#「心ならずも共和主義者となっている人々」に傍点]。」――貧弱な楽しみなるかな! それらの劣等者を強《し》いてみずから劣等者だと自認せしめなければいけない。そしてそのためには、優秀者を圧迫している多数に向かって、優秀者――労働階級もしくは有産階級の優秀者――の最上権を承認せしむる一つの権力以外に、なんらの方法もない。年若い知識階級の者や高慢な小有産階級の者が、王党もしくは革命党になってるのは、傷つけられた自尊心や民主的な平等にたいする憎悪の念などによってであった。そして私心のない理論家らが、暴力の哲学者らが、善良な風見として、彼らの上方につっ立って、嵐《あらし》を告げる赤旗となっていた。
 また最後に、霊感を求めてる文学者――書くことを知ってはいるが何を書くべきかをよく知らない人々、の一隊があった。あたかもアウリスの港におけるギリシャ人のように、凪《な》ぎつくした静穏に封じ込められて、彼らはもう前進することができず、いかなる風にてもあれ帆を孕《はら》ますべき順風を、待ち焦がれているのである。――そのうちには、世に高名な人々、ドレフュース事件のために意外にも文筆の業から離れて、公衆の会合に投げ込まれた人々も、見受けられた。先導者らが得意になったほど、その例に倣《なら》う者があまりに多かった。多数の文学者らが、今では政治を事として、国務を司《つかさど》らんと考えていた。彼らにとってはすべてのことが、団結を作り、宣言を発し、カピトールの殿堂を救うべき、口実となっていた。前衛の知識者らのあとには、後衛の知識者らが控えていた。両方とも同じくらいの価値の人々だった。どちらも他方の者を知識者として取り扱い、また自分をもみずから知識者として取り扱っていた。幸いにも血脈中に民衆の血を数滴所有してる人々は、それを光栄としていた。その中にペンを浸して書いていた。――すべての者が皆有産者で不満をいだいていて、有産
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