った。その後のことは耳にもはいらなかった。眼の前が何もかも混乱した。彼女は叫び出したかった。
「いいえ、いいえ、私に子供をください……。」
クリストフは話しつづけていた。彼女にはその言葉も聞こえなかった。けれど彼女は我を押えようと努力した。セシルがそれとなく打ち明けた事柄に思いをはせた。彼女は考えた。
「私によりもあの女にはいっそう子供が必要なのだ。私には親愛なアルノーもあるし……それから、いろんなものもあるし……それから、私のほうが年もとっている……。」
そして彼女は微笑《ほほえ》んで言った。
「それがよろしいでしょう。」
しかし、暖炉の炎は消えていたし、顔の赧《あか》みも消えていた。そのやさしい疲れた顔にはもはや、いつものあきらめきった温良さの表情があるばかりだった。
「愛する者に裏切られた。」
そういう考えにオリヴィエは圧倒されていた。クリストフは愛情のあまり、彼をきびしく鞭撻《べんたつ》してやったが、その甲斐《かい》もなかった。
「しかたがないさ。」とクリストフは言った。「味方から裏切られることなんかは、病気や貧困や馬鹿どもとの戦いと同じように、ごくありふれた試練なん
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