《とびら》を開いた。クリストフがはいって来た。彼はひどく感動していた。彼女はやさしく彼の手をとった。
「どうなすったの?」と彼女は尋ねた。
「あの、オリヴィエがもどって来たんです。」と彼は言った。
「もどっていらして?」
「今朝やって来ました。『クリストフ、助けてくれ!』と言うんです。僕は抱擁してやりました。泣いていました。『僕にはもう君だけだ、彼女は行ってしまった、』と彼は言いました。」
 アルノー夫人はびっくりして、両手を握り合わして言った。
「まあ不仕合わせなお二人ですこと!」
「彼女は行ってしまったんです、」とクリストフはくり返した、「情夫といっしょに。」
「そしてお子さんは?」とアルノー夫人は尋ねた。
「夫も子供も置きざりです。」
「まあ不仕合わせな女《ひと》ですこと!」とアルノー夫人はまた言った。
「オリヴィエは彼女を愛していました、」とクリストフは言った、「彼女だけを愛していたんです。もうその打撃からふたたび起《た》ち上がることはできますまい。『クリストフ、僕は彼女から裏切られた……僕のいちばんよい友から裏切られた、』とくり返し言うんです。僕は言ってやりました。『君を裏切
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