してそれらの真実な幻像は、彼女にあっては、架空的な追憶が加わるために変形されてしまった。彼女はそういう広漠《こうばく》たる世界のうちにおぼれる気がした。しっかりした足がかりを得るために家へもどらなければならなかった。
 けれども、他人を見たりその心中を読みとったりする必要が、なんで彼女にあったろう? 彼女はただ自分自身の内部をながめるだけで十分だった。外部から見たところでは光のない蒼白《あおじろ》い彼女の存在も、内部においてはいかに光り輝いてたことだろう! なんという充実した生活だったろう! 人が夢にも知らないほどの、なんというたくさんの追憶が、宝が、あったことだろう!……そしてそれらのものは、かつて多少の現実性を有したことがあるか――もちろんある。それらは現実だったのだ。なぜなら彼女にとって現実だったから……。おう、夢想の魔法|杖《づえ》に変容させられる憐《あわ》れな生活よ!
 アルノー夫人は長い歳月をさかのぼって、幼年時代までも思い起こしていた。消え失《う》せた希望のかよわい小さな花までが、一つ一つひそかに咲き返った……。ある少女にたいする幼い初恋。彼女はその娘を一目見たときからも
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