利用して、そこへ勉強に行った。でリュシル・アルノーは、がらんとした部屋《へや》の中に一人でいた。八時から十時まで手荒い仕事をやりに来る家事女と、毎朝注文を聞いて品物をもって来る商人とを除いては、だれも訪れてくる者がなかった。その建物の中には、もうだれも知人がなかった。クリストフは移転していた。リラの植わってる庭には新しく来た人たちが住んでいた。セリーヌ・シャブランはオーギュスタン・エルスベルゼと結婚していた。ユリー・エルスベルゼは鉱山採掘の任を帯びて、家族を連れてスペインへ行っていた。老ヴェールは妻を失って、パリーの住居にはほとんど来ることがなかった。ただクリストフとその友のセシルとだけが、リュシル・アルノーとまだ交際をつづけていた。しかしその二人は遠くに住んでいて、毎日苦しい仕事に追われていたので、幾週間も彼女を訪《たず》ねて来ないことがあった。彼女は自分だけを頼りにするのほかはなかった。
彼女は少しも退屈してはいなかった。自分の興味をそそるにはわずかなもので足りた。日々のちょっとした仕事。毎朝母親めいた入念さでか細い葉を洗ってやる小さな植木。灰色のおとなしい飼い猫《ねこ》。その猫
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