じっとしていた。時間が流れ去っていった。夕方になって、小径《こみち》の砂の上に人の足音がした。墓守《はかもり》が通りかかって、そこにすわってるクリストフをながめた。クリストフはだれが花を手向《たむ》けたのかと尋ねた。ブイルの百姓女が年に一、二回やって来るのだと、男は答えた。
「ロールヘンだろう?」とクリストフは言った。
 二人は話しだした。
「あなたは息子《むすこ》さんかね。」と男は言った。
「息子は三人あるよ。」とクリストフは言った。
「わしが言うのはハンブルグの息子さんでさあ。ほかの二人は悪くそれちゃいましてね。」
 クリストフは頭を少しそらし加減にして、じっとして口をつぐんでいた。太陽は没しかけていた。
「もう閉《し》めますよ。」と墓守は言った。
 クリストフは立ち上がって、墓守といっしょにゆっくりと墓地を一回りした。墓守は親切にしてくれた。クリストフは立ち止まっては碑名を読んだ。いかに多くの知人らがそこに集まってることだろう! オイレル老人――その婿――先のほうには、幼年時代の友だちや、いっしょに遊んだことのある少女たち――また彼方《かなた》には、心ときめく名前、アーダ……。す
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