っていなかった。黴《かび》や、熟した果実や、涼しい影や、日に暖まった樹脂《やに》多い木立、などの匂《にお》いがしていた。クリストフは、数日間引きつづいてジャックリーヌといっしょに暮らすうちに、しみじみとしたやさしい感情からしだいにとらえられた。彼はそれにたいして少しも不安をいだかなかった。彼女の姿を見、その声を聞き、その麗わしい身体に触れ、その口から出る息を吸って、彼は潔白なしかし無形的ではない一つの快さを覚えた。オリヴィエはやや気にかかりながらも黙っていた。彼は少しも疑念をいだきはしなかった。しかしある漠然《ばくぜん》たる不安に苦しめられた。そうだと自認するのも恥ずかしかった。みずから自分を罰するために、しばしば二人だけをいっしょにさしておいた。ジャックリーヌはその心中を読みとって、心を動かされた。彼にこう言ってやりたかった。
「ねえあなた、心配なさらなくてもいいわ。私はまだあなたをいちばん愛してるのよ。」
 しかし彼女はそれを口に出さなかった。そして三人とも事の成り行きに任していた。クリストフは何にも気づいていなかった。ジャックリーヌは自分が何を望んでるかはっきり知らないで、それを
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