のとなすのであるが、彼はそれを夢にも知らない。彼はそれを見てとらない。彼は女のように自分の生活全部を担保として、愛の上に賭《か》けたのではない。彼の生活は他のほうで満たされている……。しかるに、女の生活やその広大な願望は、何が満たしてくれるであろうか。人類が引きつづいてる四十世紀の間、一時の愛と母性というただ二つの偶像に燔祭《はんさい》としてささげられて、いたずらに燃えつくしてる、その熱烈|豊饒《ほうじょう》な力をもってる無数の女を、何が満たしてくれるであろうか? そして右の二つの偶像さえ、実は崇高な欺瞞《ぎまん》であって、しかも女のうちの多くの者には拒まれており、その他の女の生活を充実させるのも数年間のことにすぎない。
ジャックリーヌは絶望していた。刃《やいば》ように自分を突き通す恐怖を、ときどき感ずることがあった。彼女は考えた。
「なんのために私は生きてるのだろう? なんのために生まれてきたのだろう?」
そして彼女の心は悶《もだ》え苦しんだ。
「ああ私はもう死ぬのだ、もう死ぬのだ!」
その考えが彼女につきまとい、夜中にまで追っかけてきた。彼女は自分がこう言ってる夢をみた。
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