い豊満の瞬間を味わったが、しかし二人はあまりに異なっていた。そして二人とも同じく激しい気質だったから、しばしば衝突をきたした。その衝突は少しも卑しい性質を帯びなかった。なぜなら、クリストフはフランソアーズを尊敬していたから。そして、時には残忍となり得るフランソアーズも、自分にたいして親切な人たちには親切であった。どんなことがあってもそういう人たちに悪いことをしたくなかった。それに元来二人はどちらも、快活な素質をもっていた。彼女は自分自身をあざけった。それでもやはり彼女は悩んでいた。昔の情熱にまだとらえられていた。まだあのくだらない男を愛していて、その男のことをやはり考えていた。そしてそういう恥ずかしい状態に堪え得なかったし、ことにクリストフからそれを察せられることに堪え得なかった。
 クリストフは、彼女が幾日も憂鬱《ゆううつ》に沈み込んで黙ってたまらなそうにしてるのを見て、彼女が幸福でないことを不思議がった。彼女は目的を達していたではないか、人から賞賛され媚《こ》びられる大芸術家となっていたではないか……。
「そうよ、」と彼女は言った、「商人のような魂をもってて事務的に芝居を演ずる、多
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