芸術が花を咲かせる機会をあまりもたないことは、自然の理である。
こういう芸術にたいしては、おそらくクリストフは、他の芸術家たちと同様に不適任であるかもしれなかった。彼の長所そのものが、彼の平民的な力が、ここでは一つの障害となっていた。彼はただこの芸術を頭に浮かべたばかりであり、フランソアーズの助力で多少の草案を作り得たにすぎなかった。
彼はかくて、聖書《バイブル》の数ページをほとんど原文どおりに取ってきてそれを音楽に移した。――たとえばヨセフのあの不滅な一場面であって、そこでヨセフは、兄弟たちに自分の身の上を明かし、そして、多くの困難の後にもはや感動と愛情とに堪えきれなくなって、老トルストイやその他多くの者に涙を流さしたような、つぎの言葉を低くささやくのである。
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われはもはやみずから忍ぶことあたわず……。聞けよ、われはヨセフなり。わが父はなお生きながらえおるや。われは汝《なんじ》らの弟、姿|失《う》せたりし汝らの弟なり……。われはヨセフなり……。
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この美しい自由な共同生活は、長くつづくことができなかった。二人はいっしょに力強
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