も彼を有名にしてやった。
「そしてもう今では、」とクリストフは言った、「だれもあなたにたいしてなんともすることはできません。あなたのほうで他人を勝手に取り扱えるのです。」
「あなたはそう思っていらして?」と彼女は悲しげに言った。
そこで彼女は、運命のも一つの悪戯《いたずら》を語ってきかした――自分が軽蔑《けいべつ》してるくだらない男に迷い込んだ話を。それはある文学者で、彼女を利用し、彼女のもっとも著しい秘密を奪い取り、それを小説に書き、それから彼女を捨ててしまった。
「私はその男を、」と彼女は言った、「靴《くつ》の泥《どろ》のように軽蔑《けいべつ》しています。そして、そのひどい奴に自分が惚《ほ》れてることだの、ちょっと手招きさえさるれば、すぐ駆けつけて行って自分を辱《はずか》しめるだろうなどということは、考えるだけでもぞっとします。けれど、どうにもしかたがないんです。私の心は、私の精神が望んでるものを少しも好みません。そして心と精神とを、どちらか代わる代わる犠牲にし辱しめるようになるのです。私には心があり、身体があります。その二つが喚《わめ》きたてて、自分だけの幸福を求めています。私
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