…と突然、彼女は尋ねた。
「何時でしょう? まあー! 二時間もいましたのね。……ごめんください……。ほんとに心が休まりましたわ。」
 彼女は言い添えた。
「またお伺いしたいんですの……たびたびでなく……ときどき……。お話を聞くと私のためになりますの。でも私は、お邪魔をしたくありませんわ。お時間をつぶしたくありませんわ……。でほんのしばらくの間、たまにね……。」
「僕のほうから伺いましょう。」とクリストフは言った。
「いえいえ、いらしちゃいけません。お宅のほうがいいんですの……。」
 しかし、その後彼女は長らくやって来なかった。
 ある晩彼は、彼女が重い病気になっていて、もう数週間前から芝居にも出ていないことを、ふと聞きこんだ。来るなと言われていたけれど、それでも訪《たず》ねていった。面会は断わられた。けれど名前が通じられると、彼は階段の上で呼びもどされた。彼女は床についていた。快方に向かっていた。肺炎にかかったのだった。かなり様子が変わっていた。けれどやはり、人を近づけない皮肉な様子と鋭い眼つきをしていた。それでもクリストフを見ると、ほんとうにうれしげなふうを示した。彼を寝台の近くにす
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