した。
「いえ、」と彼女は言った、「そんなことはいいんです。」
彼女はあたりを見回し、いろんな品物を見つけ出し批判した。それからルイザの写真を見つけた。
「お母《かあ》さんですか。」と彼女は言った。
「ええ。」
彼女はそれを手に取って、しみじみとながめた。
「いいお婆《ばあ》さんね。あなたは仕合わせですわね。」
「でも、もう亡くなったんです。」
「そんなことは構いませんわ。とにかくこんなお母さんがあったんですもの。」
「ではあなたは?」
しかし彼女はちょっと眉《まゆ》をひそめてその話を避けた。自分のことを聞かれるのを好まなかった。
「いえ、あなたのことを話してください。私にきかしてくださいよ……何か身の上のことを……。」
「そんなことをきいてどうするんです?」
「いいから話してちょうだいよ……。」
彼は話したくなかった。しかし彼女の問いに答えないわけにはゆかなかった、聞き方がたいへん上手《じょうず》だったので。そしてちょうど、心悲しかったある種の事柄、友情の話や別れ去ったオリヴィエの話などを語ってしまった。彼女は憐《あわ》れみと皮肉とのこもった微笑を浮かべて、耳を傾けていた。…
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