ッ棒を手にしていたまえ……。今夜、天主[#「天主」に傍点]が門前を通られないともかぎらないのだ。」
その夜、天主はごく近くを通りたもうた。その翼の影は家の敷居に触れた。
外観上はつまらないいろんな事件の結果、フランスとドイツとの関係が突然険悪になっていた。そして二、三日のうちに、近隣の誼《よし》みによるふだんの関係から、戦争に先立つ挑発《ちょうはつ》的な調子に変わっていった。この状況に驚く者は、理性が世界を統べるという幻のうちに生きてる人々ばかりだった。しかしそういう人はフランスにたくさんいた。そして多くの人は、ライン彼岸の新聞紙の反フランス的|暴戻《ぼうれい》さが、日に日に盛んとなるのを見て、呆然《ぼうぜん》たるばかりだった。そのうちのある新聞などは、日ごろ両国における愛国心をわが物顔に取り扱い、国民の名によって論説し、あるいは独断であるいは国家とひそかに結託して、取るべき政策を国家に指定していたが、それがみな、侮辱的な最後|通牒《つうちょう》をフランスに送っていた。前からドイツとイギリスとの間にある紛議が起こっていた。そしてドイツは、それに関係しない権利をさえフランスに与え
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