Xトフは、左右を顧みず猪突《ちょとつ》していた。パリー人の「温情」をことにいらだっていた。
「パリー人らがあんなに自慢そうに大議論をして、悪人どもを『容赦』しようとするのは、それは、」と彼は言った、「悪人どもはすでに悪人となるほど不幸であり、もしくは、彼ら自身には責任がないのである、と考えての上のことだ……。しかし、第一に、悪をなす者どもが不幸であるとは真実でない。そんなのは、芝居の上の道徳観念であり、幼稚な通俗劇の観念であり、スクリーブやカプュスの作品中に陳列されてるのと同様のばかげた楽天的観念である――(君らのパリーの偉人たるスクリーブやカプュスこそ、享楽的で偽善的で幼稚で自分の醜を正視し得ないほど卑怯《ひきょう》な君らの中流社会に、ちょうどふさわしい芸術家だ。)――悪人たる者はよく幸福な人間になり得るのだ。幸福な人間になるべき機縁をもっとも多くそなえていさえする。そして悪人に責任がないということ、それもまた馬鹿げたことだ。自然は善と悪とに無関心であるから、またしたがって邪悪でさえもあり得るから、人はよく罪深くあるとともに完全に健全であり得るということを、認めるだけの勇気をもつがい
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