二、三の道楽者の目標となった。彼らはすっかり確信しきって、彼女は自分のものだときめていた。前もって彼女の臆病《おくびょう》さにつけ込んでいた。彼女を賭《か》け物とさえ見なしていた。
彼女はやがて、無名の手紙――なおくわしく言えば、上品な偽名を用いてる手紙――を幾通か受け取った。それらはみな意中を明かす手紙だった。愛の手紙で、初めはまず密会場所を定めた阿諛《あゆ》的な急《せ》き込んだものだった。つぎにはすぐに、威嚇《いかく》を試みた大胆な手紙となり、やがて侮辱的な卑しい誹謗《ひぼう》の手紙となった。それは彼女を裸体にし、彼女の身体の秘処を細かく述べたて、露骨な渇望で彼女の身体を汚していた。定めた密会場所へもし彼女が来なかったら、公衆の中で侮辱してやるとおどかしながら、彼女の無邪気な性質に乗じようとしていた。彼女はそういう申し込みを招いた心痛から涙を流した。そしてそれらの侮辱は彼女の身体と心との自尊心をひどく害した。彼女はどうしたらそれからのがれられるかわからなかった。弟には話したくなかった。弟があまり心配して事件をなおいっそう重大ならしむることは、わかりきっていた。また彼女には他に男の
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