ていました。すると今お会いなすったあの恥ずかしがりやさんが、震えるほど怒《おこ》りながら立ち上がって、あなたのことを口にしてはいけないと言い出したのです。大した意気込みじゃありませんか! おりよく私が居合わしていました。思い切って笑ってやりますと、リュシアンも私の真似《まね》をしたのです。相手は困って黙り込んで、とうとうあやまりましたわ。」
「気の毒に!」とクリストフは言った。
彼は感動していた。
「どこへ行ったんでしょう?」と彼はつづけて言いながら、他のことを話しかけるルーサン夫人へは耳も貸さなかった。
彼は青年を捜し始めた。しかしその友は姿を隠していた。クリストフはルーサン夫人の方へもどってきた。
「なんという名前ですか教えてください。」
「どなた?」と彼女は尋ねた。
「今のお話の人です。」
「あなたの若い詩人の方《かた》ですか。」と彼女は言った。「オリヴィエ・ジャンナンというんですよ。」
その名前の反響は、クリストフの耳へは、よく知ってる音楽のように響いた。一人の若い女の影が、彼の眼の底にちょっと浮かんだ。しかし新しい面影が、友の面影が、すぐにそれを消してしまった。
ク
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