がいないとわかってる時間にした――ヘヒトと話すのを避けるために。しかしそれは余計な用心だった。一度ヘヒトに出会ったことがあるけれど、ヘヒトは彼の健康を二、三言冷淡に尋ねたばかりだった。
 かくして彼は沈黙の獄屋に蟄居《ちっきょ》していた。するとある朝、ルーサン夫人から一晩の音楽会の招待状を送ってきた。名高い四重奏曲が聴《き》かれるはずだった。手紙はきわめて親切な文句で、主人のルーサンも懇篤な数行を書き添えていた。彼はクリストフとの仲|違《たが》いを自慢にはしていなかった。情婦の女歌手と喧嘩《けんか》をして彼女に容赦ない批判をくだすようになってからは、なおさらのこと自慢にしてはいなかった。彼は善良な男だった。不正な目に会わしてやった人たちを恨んではしなかった。不正を受けた人たちが彼よりもいっそうそれを根にもってるのが、おかしく思われるほどだった。それで、そういう人たちに会ってうれしい時には、躊躇《ちゅうちょ》せずに手を差し出すのであった。
 クリストフは初め肩をそびやかして、行くものかと誓った。しかし音楽会の日が近づくに従って決心が鈍ってきた。もう人間の言葉を一語も聞かないので、ことに音
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