ひっそりとなった。生命は大地の血管中に潜み込んだかと思われた。ただ静かに笛の歌のみがつづいていた。サウルが幻影に駆られながら通りかかった。心乱れたこの王は、虚無にさいなまれて、嵐《あらし》に吹きゆがめられつつ燃えさかる炎のように、いらだっていた。自分の周囲と身内とにある空虚にたいして、懇願しののしり挑《いど》みかかっていた。そして彼が息つきて曠野の上に倒れかけた時、なおつづけられてる牧童の歌の平和な微笑《ほほえ》みが、静寂のうちにまた現われてきた。サウルは騒ぎたつ胸の動悸《どうき》を押えながら、寝そべってる少年のそばへ無言で近づいていった。なお無言のまま少年を見守《みまも》った。その傍《かたわ》らにすわって、この牧童の頭に熱い手をのせた。ダヴィデは心|臆《おく》しもせず、振り向いて王をながめた。そしてサウルの膝《ひざ》に頭をのせて、また歌をつづけた。夕闇《ゆうやみ》が落ちてきた。ダヴィデは歌いながら眠ってしまい、サウルは泣いていた。そして星の輝く夜のうちに、甦生《そせい》した自然の賛歌と回癒《かいゆ》した魂の感謝の歌とが、新たに起こってきた。
クリストフはその場面を書きながら、自分自
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