ひそかに感じていたところのことを、だれも見て取り得なかったから。すなわちそれは、穏和の偽瞞《ぎまん》であった。一つの力に衝突してそれを切り捨てることができない時に、ひそかに暗黙のうちにそれを窒息させようとすることだった。彼はクリストフと同じく時日に期待をかける男だったので、別に急いではいなかった。クリストフの方は建設せんがためにであったが、彼の方は破壊せんがためにであった。クリストフをストゥヴァン家の客間から次第に遠ざけたように、クリストフからシルヴァン・コーンやグージャールを引き離すのは、むずかしいことではなかった。彼はクリストフの周囲を空虚にしていった。
クリストフ自身でもそれを助長していた。彼はいずれの流派にも属しなかったし、なおよく言えばあらゆる流派の敵だったので、だれをも満足させなかった。彼はユダヤ人どもを好まなかった。しかし反ユダヤ主義者らをさらに好まなかった。悪いからというのではなく力強いからというので、この有力な小数党たるユダヤ人どもに反抗してる、大多数の者らの卑怯《ひきょう》さ、嫉妬《しっと》や怨恨《えんこん》の下劣な本能に訴えたやり方、それを彼はきらっていた。かく
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