すめ》の役をしてる女優が「腐ったソースのような」鈍い声を出してると言ったり、花形女優が「ランプの笠《かさ》のような」着物をつけてると言ったりした。――あるいはまた、夜会へ出かけた。その楽しみは、自分の姿を人に見せることだった。もちろんきれいな女にとってである。――(そのきれいさも日によって異なっていた。パリーの美人くらい変わりやすいものはない。)――そして服装や身体の欠点など、すべて人々にたいする批評の種を、新たに仕入れた。話の方は少しもやらなかった。――遅くなって家に帰った。なかなか寝られなかった。(最も眼が冴《さ》えてる時間だった。)テーブルのまわりにぐずついていた。書物を開いてみた。ある言葉や身振りを思い出して一人で笑った。退屈してきた。非常に味気なかった。眠ることができなかった。そして夜中に突然、絶望の発作に襲われるのだった。
クリストフは、時々数時間しかコレットに会っていなかったし、彼女の転身の二、三をしか見ることができなかったので、右のようなことを知るだけでもかなり困難だった。いったい彼女はいつが真面目《まじめ》なのか――あるいは、彼女はいつも真面目なのか――あるいは、彼
前へ
次へ
全387ページ中213ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング