のである。
クリストフが稽古を授けてる若い令嬢のうちに、自動車を製造してる富豪の娘で、コレット・ストゥヴァンというのがあった。父はフランスに帰化してるベルギー人で、アンヴェルスに住まってるアングロ・アメリカ人とオランダ婦人との間《あい》の子であった。娘の母親はイタリー人であった。それはまったくパリー的な家庭だった。クリストフにとっては――また多くの他人の眼から見ても――コレット・ストゥヴァンはフランスの若い令嬢の典型だった。
彼女は十八歳になっていた。若い男たちにやさしみを送るビロードのような真黒な眼、湿《うる》んだ光を眼いっぱいにみなぎらすスペイン風な瞳《ひとみ》、すねたような口つきをしながら話の間に軽く顰《ひそ》めたり動かしたりする、やや長い奇妙な小さい鼻、乱れた髪、愛嬌たっぷりの顔、白粉をなすりつけた平凡な肌《はだ》、やや脹《ふく》れっ気味の大きな顔だち、太った子猫《こねこ》のような様子。
彼女はごくすらりとした身体つきで、服の着つけもよく、誘惑的な挑戦《ちょうせん》的な姿だったが、わざとらしい馬鹿げた嬌態《きょうたい》をいつも見せていた。小娘らしいふりを装《よそお》って
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