要求よりもむしろ頭の好奇心から多く発した、快楽の欲望。平凡なしかも断固たる意志。きわめてりっぱに衣服をまとい、自動的な細かな身振りをしていた。手の甲や掌《たなごころ》で、髪や櫛《くし》をこまかにたたきなでていた。そしていつも、大鏡の近くででもまた遠くででも、自分の姿が映るようなふうに――そして他人をも監視できるようなふうに――すわるのであった。そのうえになお、食事の時でもまたはお茶の時でも、よくみがかれて光ってる匙《さじ》やナイフや銀の珈琲皿《コーヒーざら》などに、自分の顔がちらと映るのを見落とさないで、何よりもその方を多く気にかけていた。食卓ではきびしい摂生法を守《まも》っていた。理想的な白粉《おしろい》ののりぐあいを害するかもしれないような食物は、いっさい口にしないで、水ばかり飲んでいた。
 クリストフが出入する周囲には、ユダヤ婦人が割合に多かった。彼はユーディット・マンハイムに出会って以来、ユダヤ婦人にあまり空望をかけはしなかったが、それでも、いつも彼女らにひきつけられた。シルヴァン・コーンは彼を、イスラエル系統の二、三の客間《サロン》へ紹介していた。そこで彼は、才知を好むこの民
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