だが、また自然からも罰せられるということを証明するのが、一編の主眼であった。それは実に容易なことだった。先夫がその女を不意に一度わが物にするようなふうに、作者はくふうしていた。そしてそのあとで、悔恨やおそらくは恥辱をも感ぜさせるとともに、それだけまたさらに強く、正直な男である第二の夫を愛したいという欲求を感ぜさせるはずの、ごく単純な自然の道を取らないで、作者は自然を無視した勇壮な心境を提出していた。自然を無視してなら有徳たることも訳はない。フランスの作家たちは、美徳ということにあまり慣れていないらしい。彼らは美徳の話をする時には、いつでも無理なこじつけ方をする。どうにも信じようがない。あたかもコルネイユの英雄を、悲劇の王様を、いつも取り扱っているかのようである。――それらの富裕な主人公や、少なくともパリーに一つの屋敷と田舎《いなか》に二、三の別邸とをもっているそれらの女主人公は、王様と同じではないだろうか? この種の作者にとっては、富裕は一つの美であり、ほとんど一つの美徳であるのだ。
観客は脚本よりもさらに不思議だった。いかなる不真実さにも彼らは驚かなかった。面白い場所になって、笑わ
前へ
次へ
全387ページ中149ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング