けており、ゴットフリートは頭を反り返らして天を仰ぎ、腰掛の上に身動きもしないでいた。先刻からモデスタは死人を相手に話してるのであった。その時になって彼女にもようやくわかった、この憐れな人は、死ぬ前に二、三言いおうとしたが、それができなかったので、悲しい微笑を浮かべながらあきらめて、夏の夕《ゆうべ》の平和のうちに眼を閉じたのである……。
 雨はもうやんでいた。嫁は厩《うまや》へ行った。息子は鶴嘴《つるはし》を取って、泥《どろ》のつまった表の溝《みぞ》をさらえた。モデスタは話の初めから立ち去っていた。クリストフは母親と二人きり室に残って、感に打たれて黙っていた。老婆《ろうば》は多少おしゃべりで、長い沈黙に堪えることができなかった。そしてゴットフリートとの交わりを残らず語り出した。それはごく遠い昔のことだった。彼女がまだうら若いころ、ゴットフリートは彼女に恋していた。彼はそれをうち明け得なかった。しかし人々はそれを彼にからかっていた。彼女は彼を嘲弄《ちょうろう》していた。皆が彼を嘲弄していた。――(どこででも彼は嘲弄されるのが常だったのだ。)――それでもゴットフリートは、忠実に毎年やって来た
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